2014年7月11日金曜日

モバイル/電子決済

電車/バスの利用はスイカ/パスモ、コンビニでの買物の支払いはナナコ/ワオン、スマホのアプリでの購入はサイトに登録済みカード、そして、実店舗での支払いはクレジットカード、現金を使わない決済が身近になってきた。

電子マネーは便利だと思う。雨の日、片手は子供と傘、もう一方はバギーと荷物。そんな格好で財布から現金を出すのはなかなか厄介なものだ。バスの乗り降り、コンビニのレジでは重宝する。その上、ポイントも付く。商品棚のX倍ポイントが付く商品に手が伸びてしまうこともある。スマホでの購入にいたっては外出する必要もない。商品の属性の一部をつかって検索をかけると、欲しい商品がでてくる。登録済みのカードで簡単に購入完了。早けれてその日、遅くても2-3日で玄関先に品物が届く。

根幹にはクレジットカードがある。クレジットカードの正体は、プラスチックのカード自身ではなく、カード番号/セキュリティコード/有効期限/保有者名という情報だ。実際、インターネットでの購入はカード情報を入力するだけのはずだ。実店舗では、これらの情報を手入力する代わりに、プラスチックカードの磁気ストライプや IC チップから読み取るようになっている。ということは、プラスチックカードの代わりにスマホに情報を持たせて、スマホから直接情報を引き出すことも可能なはずだ。

電子マネーは、何かしらの手段で(例えばクレジットカードからオートチャージする)補填した現金情報だ。その情報は、カードのICチップに蓄えておくのが一般的だが、携帯にICチップを内臓させた“お財布携帯“というのもある。情報を安全に保管でき、非接触で外部の読取装置から情報を読み取ることができるのであれば、どのようなものでも構わないはずだが、低コストでメーカを問わず多種多様なデバイスに組み込め、いろいろなところで使えるようにするには標準規格があった方がいい。日本ではソニーの FeliCaチップがカード類(Suica/Pasmo, コンビニ電子マネーカード)、そして、携帯/スマホ( お財布携帯 に組み込まれて普及した。しかし、スマホは Apple / Samsung など海外メーカがシェアを握り、それらのスマホにはお財布携帯機能はない。ここにNFCという規格が登場する。

NFCの定義

NFC 「スマートフォン決済」の普及担う次世代規格(2011)

しかし、2014年時点では、まだ普及していない。

モバイル決済、本命候補NFCが大苦戦 簡易方式に人気 (2013)

ICチップを使わずに、スマホだけの機能で決済機能を実現するような仕組みがいろいろと考案され発表されている。このスマホ/モバイル決済は大きな注目を集めている。どうやら、その理由は、1950年代に誕生したクレジットカードが急成長を遂げたように、スマホ決済も急成長する可能性があるからのようだ。中国では201413月のモバイル決済が前年同月比で 3.6( 360% !?) になったようだ。これだけ成長する分野はなかなかないはずだ。

中国のモバイル決済3.6倍 1~3月63兆円

米国では既に2012年頃にはモバイル決済が注目されていたようで、モバイル決済サービスに参入というニュースで株価が上がるようなことになっていた。

<米国>グルーポン急伸、14%高 モバイル決済サービスに参入(2012)

20141月の記事は 現金から非現金へ。個人の決済市場にイノベーションのうねりが押し寄せるとし、大きな動向を指摘している。

消えゆく銀行 金融は個人の手に

しかし、モバイル決済のハイプは、2014年中ごろ、踊場を迎えたようなトーンの記事が出た。
モバイル決済、カードに勝てず普及への道半ば

利用者は使い慣れたカードの使い勝手からは離れられず、スマホとは別に持っていたかったり、カードの形状をしたデバイスで複数のカードを管理できたり、セキュリティを高めたりする方が、クレジットカード発行体にとってインセンティブが大きいようだ。もし、慣れだけであれば、カード決済よりモバイル決済に慣れた世代が増加すると変化が起こるはずだ。

決済変化の流れはある。止まることはないだろう。これからもいろいろなスマホ決済がでてくるはずだ。最近ではヤマダ電機がスマホを使った「顔パス」決済サービスを開始したそうだ。

ヤマダ電機、ペイパルと提携し「顔パス決済」サービス開始

新しい決済の仕組み関連でよく登場するのがペイパルだ。ペイパルが面白いのは、その創業者たちの多くが独立して起業したが、かなりの割合でそれらの会社が大きく育っているところだ。 PayPal Mafia と呼ばれたりすることもある(本人たちは Diaspora の方が適切だと言っているようだ )。


ペイパルの創業期、どんなことが起きたのか想像できるだろうか。

モバイル決済はいいことずくめのように思えるが、政治的にみると匿名性のある現金がなくなることは、自由市場主義が衰退することではないかという指摘もある。

世界の決済電子化と自由市場主義の衰退

この記事の論旨
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米国では現金決済の割合は9%、EU 7%, 欧州で最初に紙幣を導入したスウェーデンでは 3% 程度になっているそうだ。カード決済すると消費税を割引くインセンティブを設けた国もある。イスラエルでは現金廃止の準備を始めた。

電子決済は国家(徴税、犯罪抑止)やサービス提供には大きなメリットがある。スウェーデンでは銀行強盗が 2008年の110件から 2011年には16件に減少した。現金輸送車が襲われることもなくなる。しかし、零細企業にとってはリスクとなる可能性が高い。電子取引には手数料がかかる。販売者は、消費者にその手数料分の金額を転嫁することはスウェーデンでは禁じられているそうだ。


「政治的に見ると、決済の電子化、非現金化は、政府が民間の経済活動を監視、管理できる度合いを劇的に高める。現金決済の政権を強めると、政府が、与党に都合の悪い野党人士の個人決済のすべてを簡単に把握でき、スキャンダルに仕立てて潰せる。政府自身が情報の使い方を律しないと、簡単に隠然独裁体制につながる」

「決済手段として匿名性が高い現金を残しておくことは、自由市場主義の基本でもある」
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世界的にキャッシュレス決済に向かっている。国家も後押しをしているようだ。EUの多くの国や米国では、現金決済できる上限金額が決められているそうだが、日本では現金決済の上限は設けられていない。この分野では日本は世界的に規制の少ない国のようだ。どうして日本にビットコインの世界で一番大きな取引所があったのか不思議におもったことはなかろうか? 理由はもっとも規制されない国だったからのようだ。

国の政策として成長戦略を掲げているが、確かに IT 分野では規制はすくなく、アイデア次第で自由にビジネスを起業できる環境は揃っているようだ。その器が想定するような人材も育って、興味深い起業をする若者もいる。その一方で、昔からの村社会の伝統的な価値観が強く残り、その影響で“仲間と地元”で内向化する若者には、会社勤めが堅実で起業などもってもほかという考え方も残る。大きな絵を描いたり、物事を思考したりすることは“大きなことを言う”といって否定的なことだと思われたら、既定路線に乗るしかない。村や“仲間と地元”が足かせとならない環境を整えることも成長戦略にとって重要な課題ではなかろうか。

米国が日本の暴力団組織に対して金融制裁を科しているそうだ。日本で金融制裁は考えられるだろうか。大きな脅威として認識されているからこその対処なのだろう。何に対する脅威かは意見は分かれるかもしれないが、アメリカが建国以来掲げる価値に対する脅威という側面があると思う。日本国内の2極化とどこかでオーバラップしているような気がする。



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